25時の海

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2024.09.14

9:00起床。心が暗くても身体がだるくても、空は青い。本当はみなはむさんの展示へ原宿まで行きたかったけど、疲れ過ぎてまともに動けないので、洗濯だけ済ませた後、ピカピカの空と風で揺れる木々を窓から眺めては眠り、水を飲んではまた眠りを繰り返して気がつけば17時。オレンジの西陽に誘発されて、のそのそと外に出る。カネコアヤノの「気分」が頭の中で流れる。上がったり下がったりしている。とりあえず近所だけでも歩かなきゃ。家から出るまで何時間もかかったのに、ベッドからたった10秒くらいでもう外にいることに驚く。こんな簡単にできることが、ひどく難しい時がある。大通りを歩いていく。左手には夕方の白い月が、右手には太陽によって縁が金色に発光している雲が見える。きれい。ということは私が今歩いてる方角は北?この町で初めて方角を意識した、新鮮な気持ち。それにしても日が暮れるのが早くなった。季節は動いてる。わたしも日々を重ねている。確実に死に近づいている。今まではそういうことを夜の海や山を眺めないと実感できなかったけど、最近は季節の変化でも感じ取れるようになった。残された時間は有限だということを意識しないと、自分を大事にできなくなる。なんてめんどくさい人間なんだろう、だけど自然の変化に敏感であり続けるのは良いこと。
昨日5時間残業した後会社をクタクタになりながら出たら、路上で酔っ払った人が寝ていて、知り合いと思われる人たちがその様子を見て爆笑しており、疲れた頭でおお〜と思った。あんなに自分勝手というか、本能のままに生きられた瞬間ってわたしにはあるだろうか。都会の地面で寝転んだらどんな気持ちになるのかな。清々しい気持ちよさを感じることができるんだろうか。どれだけ酔っても理性を捨てたことはないし、酔ってなくても周りの人の気持ちを考えない行動をとったことは、少なくとも意識している間はあまりない気がする。一回で良いから、自分本位ではちゃめちゃな行動をとってみたい。性格的に無理だとは思う。
イトーヨーカドーの小さいゲームセンターへ向かう。コロコロクリリンのUFOキャッチャーに何回も挑戦してるのに取れない。こんなにかわいいのに手に入らない。あーあ。一生取れないで終わるんだろうなと思いながらも、3回だけと決めて挑戦した。惨敗。次にガチャガチャを見て回るけど、めぼしいものはない。ドンキの中にあるリサイクルショップでかわいい秋服を買う。買えてとても嬉しい、早く着たいから本格的に涼しくならないかな。帰りにセブンでドーナツを買う。「家で温めるなら30秒が美味しいんで!30秒ね」と店員さんに言われ、この人が話してくれなかったら今日まともに会話できなかったことに気がつき、心からありがとうございますと伝える。会話してくれてありがとう。家には読んでない雑誌や本がたくさんあるし、見たい映画も山ほどある。ビーズカーテンの続きも作りたいし、描きたい絵もあるのに帰った瞬間また眠ってしまう。いつまで眠るの。うつらうつらしながら穂村弘の「世界音痴」の一場面を思い出す。

休日の電話が鳴る。受話器を受け取って耳に当てると「まだ眠ってるの?いいお天気だよ」という声がする。今までに一体、何度そう云われたことだろう。ベッドの中で目を閉じて、その声を聞きながら、涙が出そうになる。そうなんでしょうね。外はさぞ明るくて気持ちがいいんでしょうね。そんな明るいあたたかいところが、ほくは本当に大好きなんだ。そこへ行きたい。いいお天気の、いい匂いの空気を嗅ぎながら、ゆっくりと歩いてみたい。どうか、ぼくを、そこへ連れていってください。
「きのう、遅かったの?」
いいえ、でもぼくは遅くても早くても関係なく、いくらでも眠ってしまうんです。特異体質なんです。三年寝太郎なんです。
「あとでまたかけるね、寝太郎くん、夜、一緒に御飯でも食べよう」
くすくす笑って電話が切れる。私はひどく安心して笑顔のまま、また眠り込んでしまう。

わたしもこんな電話をかけてくれる人がいてくれたらな。安心して笑顔のまま眠ることができたら、それは一体どれだけ幸せなことだろう。だけど夢をみちゃいけないと自分に言い聞かせる。ひとりぼっちを抱きしめて生きていく。それしかない気がする。いつまで寝て、いつまで1人で生きるつもりなのか。寂しくないよ。眠りの中ではいろんなことを考えずに済むから良い。